逆流性食道炎による胸焼け |
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3年前から背中から腰が痛い。歩くと腰が痛くなるのでその時は床に仰向けに寝て腰を左右にひねると治る。何かの拍子に息苦しくなる。そう言って腰の曲がったおじいさんが治療にみえました。
病院では50年前に背中に重量物が当たった事故の後遺症だろうと言われたそうで、対処の方法が無いことから、マッサージを毎日受け、家で背中にお灸を毎晩すえてもらっているそうで、背中を見るとまともな皮膚が見えないくらいびっしりとお灸の痕が付いていました。
その皮膚の状態の凄さや、鍼灸にも毎日通ってくると意気込む様子に私は首を傾げました。と言うのは毎日の治療は明らかにやり過ぎだからです。本人が毎日来るからやってくれと言われても、そういう訳にはいかないので、どこかでちょうど良い刺激量に戻してあげる必要がありました。
この方がここまで治療を必要とする理由は何か?私の問答は続きました。失礼ながら、80代後半の年齢からして少し認知症になりかけているのかな?それとも、思い込みが非常に強いタイプなのかな?だとしたら、毎日治療をせざるを得ないと思い込むに至った原因は何処にあるのだろうか?
50年前に背中に重量物が当たった背骨は変形が強く前にも横にも曲がっているし、心臓のバイパス手術を2回も受けていることから、夜間の背部痛や息苦しさは狭心痛も考えられる。歩くと腰が痛くなるのは脊柱管の狭窄が起こっているからだろうか?
病院から処方されている薬もそれを裏付けるかのように血管を広げる薬が3つ、血の流れを良くする薬が2つ、潰瘍の薬が2つ、痛み止めが1つ、睡眠薬が1つ出されていました。
いろんな疑問を抱えながらも、先ずは変形から来る腰と背中の痛みに鍼灸治療をしたところ4回で症状は軽くなってそのまま来院しなくなりました。
ところが、それから半年後再び受診された時の訴えはこうでした。「一月前に追突事故に遭いむち打ちと腰痛で1週間入院した。歩くと腰が痛いが病院からはシップしかもらえなかった。また、2ヶ月前から時々胸焼けがして胃腸科で逆流性食道炎と診断され薬をもらっている。でも最近は毎晩3時間毎に背中の奥から胸焼けが起こり、胃腸科でもらっている薬だけでは足りないので、パンシロンを飲んで背中にお灸をすえてもらうとスーッと楽になって寝られる。ただ、また3時間すると同じ事が起こる。とのことでした。
これで背中におびただしいお灸の痕を付け続けてきた謎が解けました。逆流性食道炎とは簡単に言うと食道と胃の境目のがゆるくなって横になると胃液が食道に流れ込んで胸焼けを起こす病気なので、特に食後すぐに横にならないように注意する必要があります。でもこの方の場合、寝て3時間経つと胸焼けが起こるようで、その度に胃酸を抑えるパンシロンを飲み、背中に通す胸焼けの痛みをお灸で治め続けてきたようでした。
パンシロンもお灸ももちろん効果はあったのですが、身体を起こして水を飲むだけでも事は治まるし、さらには上半身を少し高くして寝れば、胸焼けそのものが起きなくなるはずでした。
そこで患者さんに病気の特徴を説明し、試しに布団の下に座布団を敷くなどして上半身が斜めになるように工夫して寝ることを勧めました。
効果はてきめんで、その日を境に夜間の胸焼けは消失し、パンシロンもお灸もいらなくなってしまいました。
「何故医者はこんな簡単な事を教えてくれなかったのだろうか?かえって鍼灸師の方が私にはずっと役に立った。」そう言って帰って行かれました。
逆流性食道炎による胸焼け